小規模雑貨メーカーのための 食品廃棄物由来プラスチック代替素材:種類、特性、加工、コスト
食品廃棄物由来プラスチック代替素材とは
環境負荷低減への意識が高まる中、製品に使用する素材の見直しは多くのメーカーにとって重要な課題となっています。特にプラスチック代替素材への関心は高く、その中でも食品廃棄物を原料の一部として活用する素材が注目を集めています。
食品廃棄物由来のプラスチック代替素材は、コーヒーかす、もみ殻、竹の端材、おから、卵の殻など、本来であれば廃棄される食品や農産物の加工残渣などを活用して作られる素材です。これらの廃棄物を粉砕・加工し、バイオマスプラスチックや他の樹脂と複合化する手法が多く用いられます。既存のプラスチックに近い成形性を持ちながら、バイオマス由来成分を含むことで、環境負荷の低減に貢献することが期待されています。
小規模な雑貨メーカー様におかれましても、このような素材の導入は、製品の環境性能を高め、ブランドイメージ向上に繋がる可能性があります。しかし、具体的な素材の種類や特性、加工の可否、コストや入手方法など、導入にあたっては様々な疑問が生じることと思います。
本記事では、小規模雑貨メーカー様が食品廃棄物由来のプラスチック代替素材を検討する際に役立つよう、素材の種類や特性、加工上のポイント、コスト目安、入手方法について解説いたします。
食品廃棄物由来プラスチック代替素材の種類と特性
食品廃棄物を活用した素材には様々な種類があり、その特性は原料の種類や配合、複合化する樹脂の種類によって大きく異なります。一般的な例とその特性を以下に示します。
- コーヒーかす由来素材:
- コーヒーかすを粉砕し、ポリプロピレン(PP)やポリ乳酸(PLA)などの樹脂と複合化した素材が多く見られます。
- 独特の風合いや色合いを持ち、消臭効果が期待される場合もあります。
- コーヒーかすの含有率によって物性が変動しやすく、射出成形や押出成形が可能ですが、流動性や強度に注意が必要です。
- もみ殻由来素材:
- 米のもみ殻を主成分とし、PPやポリエチレン(PE)などの樹脂と複合化されます。
- 比較的強度が高く、射出成形や圧縮成形に適しています。
- 耐水性や耐久性を持つ素材もありますが、フィラー含有率が高い場合は衝撃に弱くなる可能性があります。
- 竹粉由来素材:
- 竹材の端材などを粉砕した竹粉と樹脂を複合化した素材です。
- 竹特有の抗菌性や消臭効果が期待できる場合があります。
- 木粉と同様に射出成形や押出成形が可能ですが、水分率管理や繊維長の影響に注意が必要です。
- おから由来素材:
- 豆腐製造で生じるおからを乾燥・粉砕し、バインダーと成形した素材などがあります。
- 生分解性を特徴とするものが見られますが、耐水性や強度は一般的に低い傾向にあります。食品容器など使い捨て用途での検討が進んでいます。
- 卵の殻由来素材:
- 卵の殻に含まれる炭酸カルシウムなどをフィラーとして使用する素材です。
- 強度や剛性を向上させる効果が期待できますが、脆性(もろさ)が増す場合もあります。
これらの素材は、一般的なプラスチックと比較して、天然由来成分を含むことによる独特の色味や質感が特徴です。一方で、原料のバラつき、物性の均一性の確保、特定の機能性(透明性、柔軟性など)の付与に課題がある場合もあります。
加工上のポイント
食品廃棄物由来プラスチック代替素材の多くは、既存のプラスチック成形設備(射出成形機、押出成形機など)で加工が可能です。しかし、天然フィラーを含む特性上、いくつかの注意点があります。
- 流動性: フィラー含有率が高いほど、樹脂の流動性が低下する傾向があります。複雑な形状や薄肉成形の場合は、適切な素材選定や成形条件の調整が必要です。
- スクリュー摩耗: フィラーの種類によっては、成形機のスクリューやシリンダーを摩耗させる可能性があります。耐摩耗性の高いスクリューの使用などが推奨される場合があります。
- 乾燥: 素材によっては吸湿性が高く、成形前に十分な乾燥が必要な場合があります。乾燥が不十分だと、製品の品質低下や成形不良の原因となります。
- 匂い: 原料由来の独特の匂いを持つ素材もあります。製品への匂い移りが問題となる場合は、脱臭処理が施された素材を選ぶか、別の素材を検討する必要があります。
- 色: 天然フィラーの色が影響するため、着色には制限がある場合があります。淡い色や透明な色は難しいことが多く、原料の色味を生かした製品デザインが求められます。
加工に関する具体的な条件は、素材のサプライヤーから提供される技術情報を確認することが重要です。試作を通じて、自社の設備や製品形状に最適な加工条件を見つけることが推奨されます。
コストと入手性
食品廃棄物由来プラスチック代替素材のコストは、原料の種類、廃棄物の処理・加工コスト、製造プロセス、サプライヤーなどによって大きく異なります。一般的な石油由来プラスチックや汎用的なバイオマスプラスチック(例:一般的なPLA)と比較して、割高になるケースが多い傾向が見られます。これは、廃棄物の収集・選別・洗浄・加工にコストがかかること、まだ生産量が限定的であることなどが要因として挙げられます。
しかし、環境配慮への付加価値や、ブランディング効果を考慮した場合、単純な材料コストだけでは測れない価値が生まれる可能性もあります。
入手性については、一部の素材は商社や専門メーカーから比較的容易に入手できますが、特定の廃棄物由来の素材は、まだ開発段階であったり、供給体制が限られていたりする場合があります。小ロットでの購入に対応しているサプライヤーもありますが、事前に問い合わせて確認が必要です。
サプライヤーを選定する際には、供給の安定性、技術サポート体制、品質管理の状況などを総合的に評価することが望ましいです。また、地域で発生する食品廃棄物を活用した地産地消型の素材開発が進んでいる場合もあり、そうした情報も合わせて収集すると良いでしょう。
雑貨への導入事例と検討ポイント
食品廃棄物由来プラスチック代替素材は、カトラリー、食器、トレー、植木鉢、文具、小物雑貨、玩具の一部など、幅広い雑貨製品への導入が進んでいます。
導入を検討する際には、以下のポイントを考慮することが重要です。
- 用途と求められる物性: 製品の用途(例:食品に接触するか、屋外で使用するか、衝撃を受けるかなど)に対して、素材の強度、耐水性、耐熱性、耐久性、安全性などの物性が適しているかを確認します。
- デザインと外観: 素材特有の色合い、質感、表面の仕上がりが、製品のデザインコンセプトに合っているかを確認します。着色や印刷の可否も重要な要素です。
- 加工性: 自社の既存設備で加工が可能か、または新たな設備投資が必要か、加工上の特別なノウハウが必要かなどを評価します。試作での確認が不可欠です。
- コスト: 素材コストだけでなく、加工コスト、輸送コスト、廃棄・リサイクルコストなども含めたトータルコストで評価します。小ロット生産の場合のコスト効率も考慮します。
- 入手性と供給安定性: 必要な量を継続的に入手できるか、サプライヤーの供給体制は安定しているかを確認します。
- 環境訴求とブランディング: 素材の環境性能をどのように製品のストーリーとして顧客に伝えるか、ブランディングにどう活かすかを検討します。
まとめ
食品廃棄物由来のプラスチック代替素材は、環境問題への貢献と製品の付加価値向上を両立させる可能性を秘めた魅力的な選択肢です。コーヒーかす、もみ殻、竹粉などを活用した様々な素材が開発されており、既存のプラスチック成形技術である程度の加工が可能です。
しかし、素材の種類による特性のバラつき、加工上の注意点、一般的なプラスチックと比較したコストなど、導入にあたっては考慮すべき点が存在します。具体的な素材選定から、試作、加工方法の検討、コスト評価、サプライヤーとの連携まで、段階的なアプローチが重要となります。
本記事で解説した情報が、小規模雑貨メーカー様が食品廃棄物由来のプラスチック代替素材を検討する上で、実践的なヒントとなれば幸いです。用途や製品特性に最適な素材を見つけるために、様々な素材情報を収集し、実際にサンプルを取り寄せて評価することをお勧めいたします。